
CSSにもついに“スコープ”の概念が登場しました(仕様は2023年に正式策定され、Chrome 117+ で初めて実装されました)。@scopeは、CSSのスタイルルールを特定の要素範囲内だけに適用させることができる新しい仕様です。本記事では、@scopeの基本構文から実際の使用例、今後の活用方法までを具体的に解説します。
目次
@scopeとは?:CSSにおけるスコープ機能の概要
@scope
は、CSSで定義したスタイルを、特定の範囲のHTML要素(DOM)内だけに限定して適用するための構文です。まるでJavaScriptのブロックスコープのように、CSSの影響範囲を限定できます。
基本構文
<div class="container">
<h2>スコープ内の見出し</h2>
<p>この段落もスコープ内</p>
</div>
<h2>スコープ外の見出し</h2>
@scope (.container) {
h2 {
color: crimson;
}
}
この例では、.container
の中の h2
要素だけに color: crimson;
が適用され、それ以外には影響しません。
実際にデモで確認する(最新版のChrome又はEdgeにてご確認ください)
補足:スコープの終了点を指定する構文(to)
CSSの @scope
には、開始点だけでなく「終了点」を明示的に指定する構文も仕様として存在します。たとえば以下のように書くことで、.parent
から .stop-here
までの範囲にのみスタイルを適用するという意図を表現できます:
@scope (.parent to .parent .stop-here) {
p {
font-size: 14px;
}
}
しかし、2025年5月現在、この「to」構文は主要ブラウザ(Chrome, Edge など)では未実装のため、実際の反映はされません。
そのため、現時点では以下のような開始点のみを使ったスコープ指定が推奨されます:
@scope (.parent) {
p {
font-size: 14px;
}
}
将来的には to
を使ったより柔軟なスコープ制御が可能になる予定ですが、当面は progressive enhancement の考え方で取り入れるとよいでしょう。
比較:従来のセレクタとの違い
従来のCSSセレクタを使った方法と、@scope
を使った方法では、スタイルの適用範囲に大きな違いがあります。
通常のネストセレクタ
<div class="container">
<h2>通常の見出し</h2>
</div>
<h2>別のセクションの見出し</h2>
.container h2 {
color: crimson;
}
このように書くと、.container
内の h2
にだけスタイルが適用されるように見えますが、複雑なプロジェクトやコンポーネントが増えていくと、次のような問題が起こることがあります:
- 他の場所でも
.container
クラスが使われていると、思わぬ場所に影響が出る - クラス名の使い回しやカスケードの影響で、スタイルの優先度が分かりにくくなる
つまり、セレクタのスコープがグローバルに広がってしまい、副作用が起こりやすいという欠点があります。
@scopeを使うと
<div class="container">
<h2>スコープ適用見出し</h2>
</div>
<h2>別のセクションの見出し</h2>
@scope (.container) {
h2 {
color: crimson;
}
}
このように書くと、.container
の中にある h2
にだけスタイルが適用され、スコープ外の h2
には一切影響しません。これにより、スタイルの予期しない干渉を防ぎ、安全に局所的な設計が可能になります。
実用例:コンポーネント設計での利用
スコープは、デザインシステムやコンポーネントベースの設計にとても役立ちます。
<div class="card">
<h2>カードの見出し</h2>
<p>本文テキスト</p>
</div>
@scope (.card) {
h2 {
font-size: 20px;
margin-bottom: 0.5em;
}
p {
color: #333;
}
}
.card
コンポーネントだけに限定してスタイルが効くため、他の場所の h2
や p
には影響を与えません。
現在の対応ブラウザと注意点
2025年現在、@scope
は以下のようなブラウザで対応が進んでいます:
※ 最新のブラウザ対応状況は Can I use @scope をご確認ください。
- ✅ Chrome 117+
- ✅ Edge 117+
- ⚠ Firefox:開発中または behind a flag
- ❌ Safari:未対応(今後に期待)
注意点:
- まだ完全に普及していないため、プロダクション環境では
@scope
の利用にはフォールバックが必要です。 @scope
をPolyfillで補うのは現時点では難しいため、 progressive enhancement の考えで導入するのがベストです。
まとめ:CSSにもついにやってきた“スコープ”の時代
CSSの@scope
は、これまでJavaScriptやCSS-in-JSでしかできなかったスタイルの“局所化”をネイティブで実現できる革新的な機能です。特に、コンポーネントベースの設計や、スタイルの衝突を防ぎたい場面で大いに活躍します。対応ブラウザが増え次第、Web開発の標準になる可能性は非常に高いでしょう。

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