
日本語の見出しやタイトルにおいて、視認性や読みやすさを高めるために意図的な改行を行うことはよくあります。特にスマートフォンなど画面幅の狭いデバイスでは、改行位置によって文章の印象が大きく変わります。本記事では、従来のwbrタグによる手動改行と、CSSの新プロパティであるtext-wrap: balanceを活用した自動整形の2つのアプローチを取り上げ、それぞれの使い方と実践的な使い分け方法を詳しく解説します。
目次
<wbr>タグの使い方と実例
<wbr>
(word break opportunity)は、ブラウザに改行の候補位置を伝えるHTMLタグです。特定の単語間やフレーズの切れ目に挿入することで、望ましい位置での改行をコントロールできます。
使用例
<h2>日本語の<wbr>見出し改行を<wbr>極める</h2>
このように挿入することで、ブラウザが必要に応じて改行位置を選びます。特に日本語では英語のように単語で区切られないため、デザイナーやコーダーが意図的に区切りを指定する手段として有効です。
メリット
- 細かな改行位置の調整が可能
- レスポンシブ対応でも意図した箇所での折り返しが可能
デメリット
- CMSでの入力ハードルが高くなる(CMS運用者に<wbr>タグの意味を理解していただく必要がある)
- タイトルがデータベースに保存される場合、
<wbr>
を混在させることで表示と管理の整合性が崩れやすい
そのため、手動での改行管理は静的ページやデザイン重視の場面では有効ですが、動的な運用やCMSとの相性には注意が必要です。
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text-wrap: balanceとは?
text-wrap
は、CSSのtext-wrap
プロパティ群のひとつで、テキストの折り返し方を指定するプロパティです。現在、主に以下の値が存在します:
wrap
(初期値):通常の改行動作。改行可能な箇所で折り返します。nowrap
:折り返しを無効にします。改行されず横に伸びます。pretty
:できるだけ文末の一文字を次行に送るようなバランスを自動調整します(現在はChrome系ブラウザのみ一部対応)。balance
:短文の見出しなどを対象に、行ごとの文字数をバランスよく分配して自動的に改行します(本文ではこちらを中心に解説)。
それでは、このtext-wrap: balance
の使い方と実用性を詳しく見ていきましょう。
text-wrap: balance
は、CSS Text Module Level 4で提案された新しいプロパティで、見出しなど短いテキストを"バランスよく"複数行に折り返すための機能です。ブラウザが自動的に行長のバランスを考慮して改行位置を調整するため、明示的な改行指示が不要になります。
なお、text-wrap: balance
は日本語において意味的な文節や係り受けを考慮して改行するわけではなく、あくまで行ごとの文字数バランスに基づいて折り返し位置を調整する仕様です。そのため、読点(、)や助詞・接続詞の位置で必ずしも自然な改行になるとは限らず、視覚的な均衡を優先する設計になっています。
もし意味的に自然な位置での改行を実現したい場合は、形態素解析を活用したJavaScriptライブラリ(例:Kuromoji.jsやTinySegmenterなど)を組み合わせて処理する事も可能ですが、本記事ではJavaScriptまでは使わない想定です。
使用例
<h2 class="balanced">日本語の見出し改行を極める</h2>
.balanced {
text-wrap: balance;
}
このようにtext-wrap: balance;を設定するだけで、文字数や画面幅に応じた適切な改行が行われます。
メリット
- マークアップを汚さずに文字数やデバイス(画面幅)に応じた改行が可能
- CMSでのタイトル管理が楽になる
- DB内にhtmlタグを保存しない
対応ブラウザ(2025年7月時点)
※ 詳細な最新対応状況はこちらも参照:Can I use: text-wrap: balance
ブラウザ | 対応状況 |
---|---|
Chrome 114〜129 | 🔶 部分対応 |
Chrome 130以降 | ✅ 完全対応 |
Edge 114〜129 | 🔶 部分対応 |
Edge 130以降 | ✅ 完全対応 |
Firefox 121以降(Desktop) | ✅ 完全対応 |
Firefox 140以降(Android) | ✅ 完全対応 |
Safari 17.5以降(macOS/iOS) | ✅ 完全対応 |
Safari 17.4以前 | ❌ 未対応 |
Opera 116以降 | ✅ 完全対応 |
IE・レガシーブラウザ | ❌ 未対応 |
最新版のモダンブラウザでは完全対応していますが、少しまえのバージョンでは一部未対応の環境もあるため、完全な信頼性を求めるなら注意が必要です。
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実践的な使い分け方
<wbr>
とtext-wrap: balance
のどちらを採用するかは、以下のように用途によって使い分けるのが理想的です。
シーン | 推奨手法 | 理由 |
静的ページやランディングページ | <wbr> | デザインの細部にこだわりたい、手動での管理が可能な場合。 |
CMSで運用されるブログ・ニュース記事 | text-wrap: balance | 更新担当者の技術的ハードルや管理負荷を軽減。タイトルの再利用を想定し、DBにはhtmlタグを保存したくない場合。 |
古いブラウザにも対応が必要となる場合 | <wbr> | 古いブラウザにも対応したい場合には手動制御が安心。 |
将来の保守性を重視する場合 | text-wrap: balance | HTMLに手を加えずに済み、スタイルのみで調整可能。 |
まとめ:よりよい見出し体験を目指して
見出しの改行は、視認性・可読性・印象といったWebコンテンツの重要な要素に直結します。これまでは<wbr>
のような手動調整が主流でしたが、text-wrap: balance
の登場により、より保守性の高い手法が選択肢に加わりました。
特にCMSと連携した運用が必要なプロジェクトでは、text-wrap: balance
の導入を検討する価値があります。ただし、これは日本語の意味的な文節や係り受けを考慮した改行ではなく、行ごとの文字数のバランスに基づいた視覚的な整形であることに注意が必要です。
使いどころを見極めながら、プロジェクトや運用体制に応じた柔軟な使い分けを心がけましょう。

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